是枝裕和 "歩くような速さで"

是枝裕和監督によるエッセイ集.日常のこと,映画のこと,役者のこと,メディア業界のこと.個々のエッセイの読了感は,監督の映画作品の観了感のように穏やか.もっと作品が好きになった.

{%blockquote%} 映画も,出来れば直接悲しいとか寂しいとか言わずにその悲しみと寂しさを表現したい.文章でいうところの「行間」を有効に活用しながら,観る者の想像力によって補完してもらうことで映画に参加してほしいと,そう思いながら作っている(「行間」) {%endblockquote%}

{%blockquote%} 作品に語るに足るメッセージというものが含まれているならば,それは作者ではなく読者や観客によって発見されるものであるに違いない.(「メッセージ」) {%endblockquote%}

{%blockquote%} 作家が世界を支配するのではなく,世界の不自由を受け入れるという,この諦めの態度.そして,その不自由さを面白いと思える感覚.それこそがドキュメンタリー的なのだろうと自分では分析している.(「ドキュメンタリー」) {%endblockquote%}

{%blockquote%} 演出というのは演技指導だけを指しすわけではなく,監督が10人いれば10通り存在するような曖昧なものだ.しかし,僕の場合,目指しているものがひとつだけ明快にある.映画が描いた前日も次の日も,その人間たちがそこで生きているように見えたいということである.劇場を出た人が映画の,物語の内部ではなく,彼らの明日を想像したくなるような描写.そのために演出も脚本も編集も存在しているといっても過言ではない.(「ねえ,それとって」) {%endblockquote%}

参考