自宅で美味いコーヒーを淹れる

by Taichi Nakashima,

この記事はコーヒー Advent Calendar 2015の17日目の記事です.

コーヒーを淹れること,豆を買いに行くこと,コーヒー器具を集めること,コーヒー関連の本を読むことが好きだ.コーヒーは趣味といっても過言でなない.自宅で美味しいコーヒーを淹れるために今までいろいろ試行錯誤してきたが,最近ある程度固まってきたのでその環境についてまとめてみる.

過去

最初に自分とコーヒーとの馴れ初めをつらつらと.

親がコーヒー好きなので実家では当たり前のように毎日コーヒーが淹れられていた.そのため家で自分でコーヒーを淹れて飲むのは当たり前のものとして育った.実家ではドリップマシンが使われていた.特にこだわりはなく出されるものをそのまま飲んでいたと思う.

自分でコーヒーを淹れるようになったのは大学生で一人暮らしを始めてから.最初は実家にあった使われていないドリッパー(確かHARIO)と近所のスーパーの安い豆でドリップを始めた.見よう見まねでなんとなくやっていたと思う.大学生にもなるとカフェなどでまともなコーヒーを飲むようになり,自分で淹れるコーヒーがあまり美味しくないと感じ始めた.

どうやら自分で豆を挽くと美味いということを聞きつけポーレックスのコーヒーミルを買い,近所のKALDIで豆を買い,手挽きによる豆とドリップを始めた.

こうなってくると良いドリッパーも欲しくなる.いろいろ探してChemexを買った.Chemexは未だに使っているので5年以上の付き合いになる(よくおしゃれインテリア的な感じで使ってるやついるけどああいうやつはフィルターが買えなくなって最終的に花瓶として使い始める.映画“インターステラー”では水飲み用のデキャンタとして使われていて映画の評価に響いた).

手挽きはとにかく失敗した.特にグラインドが粗すぎて青臭くなってしまうことが多かった.また手挽きは時間がかかるため平日は厳しくて週末しかできないとう問題があった.そのため在学中は平日はお店で挽いてもらった豆でドリップし,週末に手挽きでドリップをした.ドリップは自己流でやっていて日によってばらつきがあるもののある程度まともなものが淹れられるようにはなった

現在

過去のコーヒー環境には以下の問題があった.

  • 手挽きをしていたため平日に自分で豆を挽くことができないこと
  • 自己流ドリップで同じ豆でも味が固定されないこと
  • 良質な豆を使っていないこと

まず1つ目は社会人になり財力で解決した.必要なのは良質な電動グライダー.コーヒーは一生付き合うと思いKalitaのナイスカットミルを購入した.これは最高でグラインドは綺麗に均等になるしあらゆる淹れ方(ドリップ,エスプレッソ,フレンチプレス)にあったグラインドに簡単に調整できる.何より速い.忙しい朝でも新鮮な豆を挽くことができる.

2つ目の再現性の問題.これは本を読み,またサードウェーブの流れに触れることで多くを学び解決した.これについては以下で詳しく書く.

3つ目の問題はそもそも問題と認識できていなかった.これもサードウェーブの文化に触れることで学んだ.東京にもサードウェーブの流れを汲んだカフェはたくさんある(cf. 東京サードウェーブコーヒー).KALDIの豆は今でも買う(特にリッチブレンドが大好き)が時間があればロースターに行き新鮮な豆を買うようになった.サードウェーブの原点であるオークランドが対岸にあるサンフランシスコを訪れたときは時間があればロースターに行き,コーヒーを飲み,豆を買うなどした(cf. サンフランシスコでたくさんコーヒー飲んだ).

良い豆?

ちょっと脱線するが,良い豆って何? あるいはサードウェーブと今までの豆の違いって何? という話を.

昔ながらのコーヒーに深煎りのものが多い.それは昔は豆が熟度など不完全なものしか入ってこなくてその欠点を焙煎で消そうとしていたため.

近年はクオリティの高い豆が流通するようになった.特にサードウェーブってのは豆そのもの味を楽しもうって流れで浅煎が多い.そして素材そのものを楽しむのをよしとする.同じ農園の豆の味でも年ごとに違うし,同じ品種でもテロワール(生産地の地理/地勢/気候/土壌などの特徴)で異なってくる.今まではそれを隠そうとしたが,今はそれを楽しもうとしている.

農家に対する配慮に関してもよく語られる.これはコーヒーの美味しさは実が果実として完熟しているかどうかで決まるため.かつそれは木になっているときにしか判断できないから.良好な関係を築くことでより良い栽培/収穫方法のループを回せるようにする.スタバとかが批判されるのは同じ味を世界中で実現するために農家無視で大量生産してるから.

もちろん今でも昔ながらの深煎りも好きで全然飲むけど.

以下では最近はどのような器具を使っているのか? 再現性を高めるにはどうしているのか? などについて書く.

器具

もともとドリップ至上主義でコーヒーはドリップ,ドリップ以外は認めない,ドリップ以外は飲むに値しないという過激な立場を取ってきた.しかし豆にはその豆にあった淹れ方があることを知り,今ではこの考えを改めていろいろな抽出方法を使うようになった(メインはドリップだが).

簡単に現在使っている器具を紹介する.

左から順番に

  • Chemex - Chemexを愛して5年.これからも使い続けると思う.Chemexは専用のフィルターが必要でそれによってChemexっぽい味が出る.KALDIの豆によく使う.最近は人に淹れることもあるので6カップの購入も考えている.
  • Donuts Dripper - Chemex以外のドリップもしようと2年ほど前に購入.しっかり濃いのに重くないスッキリした飲み心地になるようにデザインされており実際そんな感じになる.市販の安いフィルターが使えるもの良い.
  • BIALETTI モカポット - エスプレッソマシンなど買えない.圧力はマシンに及ばないがそれに近しいものは淹れることができる.ど濃いコーヒーを飲みたい時に良い.イタリアにはどの家庭にもあるらしい.
  • AeroPress - 素早く淹れられて洗うのも簡単.使い方次第でいろいろな淹れ方ができて面白い(大会もあるとか).これは買ったばかりでまだうまく使えていないのでこれからもっとうまくなりたい.
  • HARIO フレンチプレス - なかなか難しいが面白い味のコーヒーを作れる.友人からプレゼントしてもらった.

ちなみにカップはFour Barrel Coffeeのもの.ここで飲んだコーヒーが今まで飲んだなかで一番美味しかった.

再現性

過去の自分のコーヒーの淹れ方には同じ豆を使っているのに再現性がないという問題があった.それもそもはずで計測などしないで感覚でやっていたのが原因.再現性への回答は計測すること.

抽出の味のファクターは豆の量,グラインドの細かさ,抽出時間,お湯の量,お湯の温度である.HARIOのドリップスケールにははかりとタイマーが付いている.これは最高のツールで豆の量とお湯の量,抽出時間を計測しながらコーヒーを抽出することができる.これを導入したことで再現性は飛躍的に高まった.

使い方を簡単に説明する.まず以下のように豆の量を測る.

次に抽出.以下はChemexを使った例.抽出しながら,時間とお湯の量を測ることができる(温度計は別途購入した).

豆の量や抽出時間はどこから知るのか? サードウェーブ系のロースターでは豆を買う時に聞けば大抵どこでも教えてくれる.場所によっては豆のグラインドのサンプルもくれる.簡単な説明書みたなのを準備してるところもある.新鮮な豆とそれを淹れるためのレシピを聞けば自宅でそれを再現することは容易い(しかもロースターで飲むと1杯500円くらいする.豆は100gあたり800円-1000円の価格帯になる.1杯あたりは10-15gの豆を使うので自分で淹れれば1杯100-150円程度になる.つまり自分で淹れたほうが断然良い).

この手法でドリップであれば5分程度で最高の味を再現できるようになった.

課題

だいぶ良い感じに美味しいコーヒーを淹れることができるようになったが,まだまだ課題がある.

言語

まだうまく豆を買えない.とにかく味の表現が複雑すぎる.昔ながらの苦味/酸味だけではなくなっている.例えばCup of excellenceの評価項目にはSweetness,Acidity,Mouth Feel,Flavour,Aftertasteがある.店に行ってもダークチェリーだのオレンジだのチョコレートだのたくさんの表現が並んでいて混乱する.

これは新しいプログラミング言語を学ぶときに大変なのと同じかなと思う.新しい言語は宇宙語に感じてしまう.とにかく量をこなして身につけていくしかない.

場所

今は自宅でしかちゃんとしたものを淹れることができない.My Travel Coffee Kitにあるように出張先でも最高のコーヒーを淹れられるようになりたい.

書籍

最後に面白かった書籍をいくつか.

Blue Bottle本は読まないといけないなあと思いつつ積んでいる.年末年始にでも読もうと思う.